近年ではコマーシャルな作品も多く参入し、
もはや邦ハウス界もバブル期に突入か? と憂慮せざるを得ない昨今。
そんな中、現在も真摯に己を信じ音楽制作に励む男がいる。
その名は瀧澤賢太郎。秋には新たなオリジナル作のリリースも噂される彼が、
なんとカバー曲を集めたアルバムを発表するという。
しかもボーカルに韓国はromantic couchの歌姫、JADEを携えて。
かねてから、並々ならぬ音楽愛を口にする彼のカバー集が悪いはずはない。
事実、この『EQUAL ONE』はダンスクラシックからメロウな楽曲までをも、
ことごとくフロア仕様にアップデートした快作であった。
これは彼自身の口から当プロジェクトの全容を訊かねばなるまい。
(取材・文/高橋圭太)
――今作の構想はいつ頃から?
「これに着手する前に、現在制作中のオリジナルアルバムの話が去年からあって、
個人的には今度のアルバムはよりメロディーの強い作品を目指そうと思っていて。
そこに至る過程で"じゃあ、いいメロディーってなんだろう?"って疑問が出てきたんですね。
それなら"いいメロディー"とはなにかを学ぶためにカバー作品を作ってみようかと」
――ある意味で音楽家としての"修行"ですね。
「そうですね。だから今回はメロディー以外の部分も高宮(永徹)さんの指導の元、じっくり制作しました」
――今作ではボーカリストとしてromantic couchのJADEさんをフィーチャーしています。彼女のボーカルの特性を教えてください。
「色々な表情を持っているシンガーだと思います。アダルトな面も持ちつつ、キュートな雰囲気も出せる、という。
個人的にも大好きな歌い手さんです」
――では選曲はJADEさんを想定して?
「いや、今回はJADEさんの声云々というよりも、自分の好きな楽曲を今の自分のフィルターを通して作りたい、って基準で作りました」
――タイトルは『EQUAL ONE』ですが、制作中に2人の音楽性が"EQUAL ONE"になった瞬間ってどんな時でしょう?
「実はこの制作に入るまで、彼女とは2〜3度ほどしか面識がなかったんですよ。
国籍も違うし、はじめはそれこそ"EQUALONE"じゃなかった。でも僕のトラックにJADEさんが歌を入れた瞬間、
"来たっ!"ってニヤけちゃいましたね。その瞬間に"EQUALONE"になったと思います」
――アルバム全体の青写真はありましたか?
「"遊び"の要素を入れよう、っていうのは強く思っていて。その意味で今作のインタールードはすごく重要なんです。
実は個々の楽曲の流れを意識して配置してありますし」
――なるほど。瀧澤さんが"インタールードの重要性"を語る上で外せない作品は?
「福富(幸宏)さんの『equality』のインタールードですね。中盤にLori Fineさんのポエトリーがあって、
その後のアンビエントからガラッと展開を変えていくあの構成にはすごく衝撃を受けたと思います」
――では今作のインタールードはどのように?
「実はあまり時間をかけたわけではなくて(笑)。特に"FAINTLY"は15分くらいで作りました。
実は、作業に行き詰まったときに現実逃避する場所なんですよ、インタールードは(笑)そういった意味で、
肩の力が抜けたものが多いかもしれないですね」
――という事は "リラックスしながら聴けるアルバム"って形容もできますね。さて、本題のカバー楽曲の話題に移りましょう。
まず、カバーするにあたってオリジナルとどう差異を付けていくか、という命題はすごく重要だと思うのですが、
今作におけるオリジナルとの差別化はどのようなところに?
「僕が思うに、そういった部分って選曲して制作に入る段階で実は解消されていると思っていて。
なので、その心配はありませんでした。ポイントはその先で、"カバーした楽曲をいかに完成度の高い作品にするか"。
今回選んだ曲は名曲ばかりだったので、プレッシャーはすごくありましたね。」
――選んだ楽曲はDJの際、レコードバックに入っている曲でもある?
「そうですね。DJ活動は自ずと反映されています。長年プレイしてる曲も多いですよ」
――「Get Back Together」(Everything But The Girl)のチョイスは意表を突かれました。
「EBTGは今のシーンにも影響を与えている重要なアーティストだと思っていて、これを機に彼らの3枚組のベスト盤を聴き直したんですよ。
その中からJADEさんの声質と僕のやりたい方向性がフィットしたものを選んで。でも素敵な曲がたくさんあるので、かなり迷いましたね」
――この楽曲は特にDJユースに出来上がっていると思いますが。
「あぁ、そこはかなり気を使いました。いい曲なのにDJでいい時間にプレイしても映えない曲って実際あるんですよ。
それが勿体無くて。それを伝えたいっていうのも今作の根底にありますね」
――そして「SWEET LOVE」ですね。実はJADEさんの声質とオリジナルのAnita Bakerのトーンって似ていませんか?
「ですよねぇ。EBTGとAnita Bakerの両方の曲でハマる声質のシンガーなんてなかなかいないですよ。
僕、初めてこの曲を聴いたのが原曲ではなくて、カバーだったんですよ。しかもM BEATってアーティストのジャングル・カバー(笑)。
そこから遡ってオリジナルに行き着くんですけど。これは収録されているアルバム『Rapture』自体もすごく好きで。
レコードで3枚持っているくらい好きです(笑)。中古屋で見ると買っちゃうんですよね」
――気持ち、すごく分かります(笑)。Bobbie Humphreyの「THEGOOD LIFE」をチョイスした意図は?
「これこそDJの時に使い勝手が難しいレコードですね。サビは踊れるけど、イントロがゆったりしていて。。。
だからこの曲は構成もズバッと変えて、サビを頭にして。
これはBobbie Humphreyにしては珍しいディスコ・タッチの楽曲で、そのディスコ度をカバーではさらに増長させました。
あとはオリジナルが持っている独特の雰囲気を壊さないように注意しましたね」
――原曲の空気感を崩さずにアップデートさせる、というのはなかなか高いハードルですよね。この曲が持っている雰囲気を一言で表すなら?
「"パーティー感"でしょうね。歌詞でも"パーティー"って連呼しているので、そこを損なったら原曲とかけ離れちゃう」
――その"パーティー感"を出す為に、前のインタールード「PARTY AT ONCE」も効いてくるわけですね。
で、次はメロウな「Until You Come Back To Me」(Arethe Franklin)です。
「JADEさんがArethe Franklinの大ファンだったみたいで、すごく嬉しそうだったのが印象的でしたね」
――こういったダウンテンポ的なビート感の源はどこから来ているんでしょう。
「僕の場合、ジャズだったり、ジル・スコットとかエリカ・バドゥなんかから影響受けているかもしれない。
あとはChilli Funk(UKの老舗クロスオーバー・レーベル)から出ていたレコードってB面の2曲目がR&Bっぽかったりするんですね。
そういうのを聴いてハウスをメインに活動しているプロデューサーが作るダウンテンポな曲っていうのに魅力を感じていたんですよ。
それが滲み出たんじゃないかなと思います」
――そしてラストはSLY & THE FAMILY STONE「EVERYBODY IS A STAR」です。
「彼らこそメロディーが素晴らしいグループですよね。今回の収録曲でいちばんリアレンジ度が高いです。
僕、SLYをちゃんと聴いたのって20歳くらいで、すこし遅めなんですよ。触手が伸びなかった理由は……いなたかったから(笑)。
それが従姉妹に成人祝いでSLYのベスト盤を貰って、その時聴いてみたらすごく新鮮で。大人の苦味が分かったような気がしました(笑)」
――今作は5曲中4曲がブラックミュージックですが、白人音楽と黒人音楽、影響を受けた比重ではどちらの方が高いんでしょうか。
「それが白人音楽なんですよね。The Policeとかも大好きだし。ただ、ブラックミュージックの魅力を改めて今作で感じたので、
今後に影響するかも知れませんね。」
――意外ですねぇ。では最後に、今後のこのカバー企画で挑戦したい楽曲はありますか?
「それは、、、秘密です(笑)。音的には自分の信じたものを作っていきたいですね。
それは次にリリース予定のオリジナル作品にも言えることなんですけどね。とにかく今作は08年のKENTARO TAKIZAWA
の通過点ですね。でも内容は譲らないぞ、と。そういう自信はありますね」
message from KENTARO TAKIZAWA